7種類のテストを実施しました
今回,アルミ溶接の依頼が大量に有りましたので、タングステン電極のテストも兼ねてみました。
このようなテストをされた大学やその他の方のご意見も有るかもしれませんが自分で使った感想です。
サイズはΦ2.4,E3タングステン,のみφ1.6を使用しました。結構長文になります。
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7種類のタングステン電極
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放電部の消耗状態の写真です
先端を拡大した写真ですが一番上の写真が反時計回りに90度回転してしまいました。ここからは実際のビードとタングステンの先端の拡大写真と使用感を説明します。弊社ではTIGCONを使用しているため電流値は常に変化するため表記できませんが、ご了承ください。
①純タングステン カラーコード(緑)
メリット
本溶接後にクレータ処理のため電流を落としていってもアークが安定します。設定は全て同じですがクリーニング効果が高いのか黒い酸化物、が見当たりませんでした。クレータ処理のため徐々に電流を落としていっても1点に集中して安定してアークは小さくなります。
デメリット
研磨直後はアークスタートも良いですが直ぐに先端が丸くなりスタートは徐々に悪くなります。ある程度の電流からは問題なくスタート可能です。但し弊社はインバータ制御の溶接機を使っていますがサイリスタ制御の溶接機では1サイズ又は2サイズ太くしないとタングステン電極が材料に向かって解け落ちます。
低電流での再スタートはきついですが、溶接終了のために電流を徐々に落としていく場合アークは安定していますのでクレータ処理は楽です。
②トリタン カラーコード(赤)
メリット
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デメリット
1発目のアークスタートは問題ありませんが再スタートはどんどん不安定のなって行きます。クリーニング効果もあまり感じることは無く結構黒い酸化物が目立ちます。何度か溶接すると先端が木の枝のように分かれてきます。スタート時、その先端から其々アークが出るので小電流でのアークスタートはまったく安定しません。クレータ処理も電流が小さくなるに連れ安定感が無くなりあちこちに非常に小さなクレータがたくさん出来た様になってしまいます。交流には使用しないほうが懸命です。
③ジルコニアタングステン カラーコード(白)
メリット
スタートは普通にスタートが可能です。ビードも問題はありません。
デメリット
トリタンのデメリットの少しましって感じです。ましなだけで、先端も進行は遅いですが枝分かれする傾向にあります。
此方も交流溶接には不向きなようです。
④?タングステン カラーコード(鶯色)
このタングステンはカラーコードが鶯色をしています。ネットで検索しても何を混ぜて有るか判断できませんでした。知ってる方いらっしゃいましたら教えていただければ助かります。
メリット
アークスタートは普通です。ビードも安定しています。クレータ処理も1点を中心に溶融プールが小さくなっていきます。概ね,純タンと同じ挙動です。
デメリット
純タンに比べるとクリーニング作用が弱く感じました。状況にもよりますが純タンと同等と判断しても問題ないと思います。
⑤レアアースタングステン カラーコード(水色)
此方もレアアースとは謳っていますが何が混入しているか判断できませんでした。
知ってる方いらっしゃいましたら教えていただければ助かります。
メリット
全ての状況でアークが安定しています。再スタートも問題ありません。
デメリット
アークが集中している分クリーニングが若干に弱い気がします。アークの集中度とクリーニングの関係は相反するのかも知れません。大電流を多用すると先端の枝分かれが起きてきます。
アメリカのWELDCRAFT製のタングステンで販売は東京のラメール株式会社様が扱っておられます。
⑥ランタナ1%タングステン通称 クロタン カラーコード(黒)
メリット
此方もレアアースタングステンと同じ様に全ての状況でアークが安定しています。再スタートも問題ありません。クリーニングも不満を感じることはありません。
デメリット
長時間使用し続けるとアークスタートがしづらくなってきます。先端を少しでも材料に接触させると先端が枝分かれし始めなす。
このタングステンは大阪のマツモト産業株式会社エクセル貿易事業部様が扱っておられます。
⑦E3タングステン カラーコード(紫)
このタングステンはドイツのビンツェル社が製造しています。
メリット
純タングステン,レアアースタングステン,ランタナ1%タングステンと同じ様に終始アークは安定しています。クリーニング効果も問題ないです。
デメリット
大電流を多用すると先端の枝分かれが起きてきます。
以上7種類のタングステンの使用感でした。暫く間が空くと思いますが,次は直流TIG溶接でタングステンのテストをしてみます。
因みに現在殆んどのタングステン電極は中国製らしいです。その中でドイツのビンツェル社は今の所ドイツ本国の技術者が中国に常駐し製品を製造してるそうです。
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